02 July 2021

日本バドミントン協会、スポーツ仲裁自動応諾条項を破棄

 


協会としての意思決定は少し前のようですが、6月30日付で下された仲裁パネル決定の中で言及されたこともあり、報道されているようです。

本件は、申立人(岐阜県に本拠を置くバドミントンチーム)が、被申立人(日本バドミントン協会)が主催する実業団バドミントンリーグへの登録を申請したところ、協会がこれを認めないと決定したため、当該決定の取消を求めてスポーツ仲裁に申し立てた事案です。2021年4月28日付の仲裁判断は申立人の請求を認容し、協会の決定を取り消しを判断していました(JSAA-AP-2020-005号事案)。が、協会はその後、スポーツ仲裁自動応諾条項からの離脱を議決のうえ(5月29日)、日本スポーツ仲裁機構に対してその旨通知し(6月10日)、機構がその受領を確認した(同11日)後に、「6月15日ころ」に、申立人をリーグに登録させない決定を行ったという事実経過です。そこで申立人は再度仲裁を申し立てましたが(6月17日)、上記自動応諾条項からの離脱の効果により、仲裁合意が存在しないと判断され、手続の終了が決定されました(JSAA-AP-2021-001号事案)。

国際法に慣れ親しんだ者としては、不利な仲裁判断が下された側がのちに仲裁管轄合意を撤回あるいは合意の範囲を縮減するということは日常茶飯事であり、珍しくない現象ですが、こと日本スポーツ仲裁業界では異例の事態のようであり、仲裁パネル決定も、自動応諾条項の在り方について長文にわたる「付言」を付しています。

なお、公平性の観点から付記しますと、日本バドミントン協会は、上記仲裁自動応諾条項からの離脱と同時に「不服審査会」を設置し、チーム登録の承認に関する不服申立の仕組みを協会内部に設けたようです。

さらに、先行する仲裁判断が扱った事案は2020年のリーグ登録申請にかかる紛争であり、本件は2021年のリーグ登録申請にかかる紛争である、と本件仲裁パネルが認定している点も踏まえる必要はあります。

14 June 2021

レバノン特別法廷、財政難により休廷の危機

 


6月2日付のプレスリリースにて発表されています。レバノン特別法廷の運営予算は、レバノン政府による拠出(49%)とその他諸国の自発的な援助(51%)からなっているところ、これらの不足により、財政支援がなければ7月31日以降の活動が見込めないと発表されました。書記局長はすでに、法廷スタッフの人員整理の可能性にも言及しています。財政難の背景としては、プレスリリースは主としてCOVID-19パンデミックを挙げていますが、より根深いところでは、同法廷の成果に対する疑義が燻ぶっているようです。

さて、仮に不幸にも財政支援が無かった場合、法制度的観点から浮上するのは係属中の案件の扱いです。財政難が理由である以上、残余メカニズムに相当する制度の構築・運営は想定しがたいかもしれません。書記局長の通知からは、"a dormancy model"への移行という表現で検討されていることが伺えますが、それ以上の詳細は明らかではありません。

09 June 2021

欧州委員会、ドイツに対して条約違反手続を開始

 


9日付で正式に開始すると、欧州議会の議員が発表しています。条約違反手続はもちろん、EU運営条約258条1項に基づくものであり、加盟国による同条約(およびEU条約)上の義務違反があると考える場合に、欧州委員会が開始することができるものです。

問題の発端は2020年5月のドイツ連邦憲法裁判所判決であり、欧州中央銀行による債券購入計画(public sector asset purchase programme: PSPP)を権限踰越(ultra vires)と判断した事件(PSPP判決)です。判決に先立ち、ドイツ連邦憲法裁判所は、欧州司法裁判所に対して先決裁定を求めており、欧州司法裁判所は、PSPPはEUの権限を逸脱するものではない(通貨政策の範疇に属する)と結論していました(C-493/17 Weiss判決)。にもかかわらず、ドイツ連邦憲法裁判所はこれと逆の結論に到達するわけですが、その際、PSPPの権限踰越のみならず、先決裁定について判決した欧州司法裁判所についても任務逸脱があると判断し、したがってドイツとしては救済措置(EU条約19条1項第2文)を講じる必要はないと判断した点が大きく話題になりました(例えばこの特集)。

ドイツ連邦憲法裁判所のこうした姿勢はある種一貫したものでありますが(例えば、リスボン条約事件判決の240-241項)、EU法の解釈をめぐる欧州司法裁判所と加盟国裁判所の相克を示す新展開となりそうです。ちなみに、筆者が個人的に関心を寄せる別の事件については同様の展開は(まだ)見られないようです。

01 June 2021

人種差別撤廃委、パレスチナ対イスラエルの国家通報の受理可能性を肯定

 


4月30日付の決定が公開されました。通報の受理可能性を肯定する結論に至っております(65項)。その主たる論拠である、通報が個別の人権侵害事例ではなく「a “generalized policy and practice”」に関して申し立てている場合には国内救済を完了する必要はないとの判断は(63項)、すでにカタール対アラブ首長国連邦の通報事例でなされた受理可能性判断を踏襲するものであり(40項)、本判断は大方の予想通りだったかと思います。

本件で目新しいのは、人種差別撤廃委員会は、そうした「a "generalized policy and practice"」の存在は単に通報国が主張すれば足りるわけではなく、証拠による疎明(prima facie evidence)を要すると述べた点にあります(63項)。この点は一見すると当然に思われるかもしれませんが、先のカタール対アラブ首長国連邦の事件では本案に併合していました(41項)。また、人種差別撤廃条約に関する国家間紛争(ウクライナ対ロシア)を扱う国際司法裁判所は、むしろ一切証拠を参照せずに原告の申立の定式のみを根拠に国内救済完了原則の不適用を結論している(ように読める)ため(130項)、異なるアプローチがありうることが示唆されています。

なお、本受理可能性判断に先立つ管轄権判断の審理手続をある意味紛糾させた(?)国連法務局のメモランダムも公開されているようですので、こちらもあわせてどうぞ。

24 May 2021

ベラルーシ、民間旅客機を航路転換させ体制に批判的なジャーナリストを拘束

 


すでに広く報じられている通り、ギリシャ発リトアニア行きの民間航空機FR4978便がベラルーシ(ミンスク)に航路変更され、着陸とともに乗客であったジャーナリストが拘束されたとのことです。事の性質上、詳細は報道に拠るほかありませんが、安全保障上の懸念(FR4978便に爆発物が搭載されている可能性)をベラルーシ管制から伝えられたFR4978便は、スクランブル発信したベラルーシ戦闘機によりミンスクまでエスコートされたとのことです。ただ、捜索の結果爆発物は発見されず、その際にベラルーシ体制に批判的なジャーナリストが拘束されたことから、同氏を拘束するために虚偽の懸念をもって着陸させた、との批判がなされています。

本件については、ベラルーシの行為を「国家テロリズム」との表現で批判する声が散見されます(例えば)。ICAOはシカゴ条約違反の可能性を示唆していますが、1971年モントリオール条約(民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約)のほうがわかりやすいかと思います。同条約第1条1項(e)は、「虚偽と知っている情報を通報し、それにより飛行中の航空機の安全を損なう行為」を犯罪としているため、国家が自らの機関(ベラルーシ管制)を通じて条約上の犯罪を犯した、と論じる余地があります。この論理構成が仮に難しい場合でも、第10条1項において、「締約国は、国際法及び国内法に従い、第1条に定める犯罪行為を防止するためあらゆる実行可能な措置をとる(shall)」とあるので、防止義務違反については論じる余地が出てくるように思います。

ちなみに、モントリオール条約には紛争処理条項があり(第14条1項)、仲裁ひいては国際司法裁判所への紛争付託が認められていますが、残念ながらベラルーシは同条に対して留保をしています。

追記:ほぼ同じ観点から分析したTweetがすでにありましたので、こちらもあわせてどうぞ。

23 April 2021

COVID-19と国際法(9) 中国に対する慰謝料請求につき、民事裁判権免除を理由に却下した事例

 

あまりタイムリーではないのですが、COVID-19に関して、中華人民共和国が「正確かつ⼗分詳細な公衆衛⽣上の情報を適時に伝達する義務を怠」ったことを理由とする損害賠償請求(慰謝料3億円)を却下した日本国内の判決(令和2年9月11日・東京地裁民事第37部・(ワ)13722号)に接しましたので、少し触れてみます。

却下の理由はもちろん民事裁判権免除であり、「人の死亡若しくは傷害又は有体物の滅失若しくは毀損」にかかる行為が日本国内で行われたとは言えないという点が主たる論拠となっております(外国等に対する我が国の民事裁判権に関する法律第10条)。この点はこれ以上掘り下げる余地はなさそうですが、原告はこのほかにも、「被告の不法⾏為の悪質性及び重⼤性等の観点から,本件訴えにつき,被告が我が国の⺠事裁判権から免除されるべきではない」という、最近再び話題の不法行為例外を主張しておりましたが、判決は、「本件訴えにつき,裁判権法の適⽤を排除する条約,国際慣習法の存在その他の具体的な法的根拠は⾒当たらない」と判断しております。不法行為例外を規定する外国法令の存在に関しても、「我が国の国内⽴法である裁判権法の解釈に直接の影響を及ぼすものとは考えにく」いとして簡潔に退けています。

21 April 2021

宣伝:国際司法裁判所における反訴の受理可能性

についての拙稿をベルギー国際法雑誌(Revue belge de droit international) 2020-1号に掲載しましたので、もしよろしければ御笑覧くださいませ。

韓国ソウル地裁、従軍慰安婦訴訟において主権免除を肯定し賠償請求を却下

 


すでに多くの報道がなされている通り(例えば)、4月21日付判決にてソウル地裁は元従軍慰安婦及びその遺族が日本政府を相手取り提起した損害賠償請求を却下しました。判決原文(のブログ著者が読める言語による翻訳)は未入手ですが、日本の主権免除が肯定され、その判断推論において「不法行為例外」および「強行規範違反例外」に関する国際慣習法の成立を否定したようです(抄訳)。国際司法裁判所のドイツ対イタリア判決に即した判断とみることができそうです(特に76項、93-94項)。

となると、国際強行規範違反については主権免除が否定されるという、上記国際司法裁判所の判決とは異なる推論を辿って真逆の結論に到達した本年1月8日付判決(要旨)との整合性が問題となりそうです。

ドイツ憲法裁判所、欧州復興基金を批准する国内法令への大統領署名の差止申立を却下

 


4月21日付のプレスリリースにより、15日付の命令で却下されたと述べられています。COVID-19対策として欧州委員会が7500億ユーロ相当の資金を市場から借り入れを行うことについての詳細を定めた欧州理事会決定(2020/2053)を批准する法令のドイツ基本法適合性が争われている事件における判断になります。注意すべきは、本命令はあくまで批准法令に対する大統領署名の差止め(einstweiligen Anordnung)請求をドイツ憲法裁判所が却下したにとどまり、いわゆる欧州復興基金のドイツ基本法適合性にかかる本請求についての判断は今後ということになります。

ドイツ憲法裁判所は昨年、欧州中央銀行(ECB)を通じたソブリン債購入計画に関し、ECBが比例性評価を行ったことの保証をドイツ政府に求める判断を下して話題となりましたが、本件については同様の介入的な結論には至りませんでした。判断推論としては、利益衡量により、署名差止めにより課される外交政策上の制約が重視されています。

05 January 2021

サウジアラビア、カタールとの国境封鎖解除へ


サウジアラビア政府のソースからの発表はまだ見当たりませんが、本件紛争で仲介役を担っていたクウェートの外相が国営放送を通じて4日付で発表しました。湾岸協力会議の首脳会談が5日に開催予定とのことなので、これに先立った形となります。同様の封鎖措置を課してきた他の周辺諸国(UAE、バーレーン、エジプト等)の動向が注目されます。

2017年6月のカタール危機(外交関係断絶と国境封鎖)以降、多くの派生紛争が国際裁判の場に持ち込まれてきており(例えば)、その多くが現在も係属中ですので、今回の進展は係属中の紛争の帰趨にも影響が及ぶことも見込まれます。

■1月6日追記:5日の首脳会談にて共同宣言に署名がなされたようです(英文はとりあえずこちらを参照しています)。宣言の文言からははっきりとは読み取れないような気もしますが、これにより一連の紛争は正式に終了した、というサウジアラビア外相の発言が報道されています。

23 December 2020

模擬裁判への参加を理由とする仲裁人忌避申立て(を却下した事例)

 


数多く開催され、数多くの国際法研究者・実務家も参加する国際法模擬裁判ですが、係属中の仲裁手続の一方当事者が主催者となっている模擬裁判(フランクフルト模擬投資仲裁)に裁判官としての関与した経験があることを理由とする仲裁人忌避申立てが他方当事者から提起され、見事に却下された例が最近公表されました(153項)。これで安心して模擬裁判の裁判官を引き受けることができると考える方もいるかもしれません。

ちなみに、同決定の主たる争点はどちらかといえば、COVID-19パンデミックを理由としてオンラインでの口頭弁論開催を決定した仲裁廷に対して不服であった被申立国が行った仲裁廷全体に対する忌避申立てにあると思いますので(とはいえこれも却下、145項)、バランスよく読む必要があります。

22 December 2020

条約解釈における「ファクター」としての国家実行

 


12月11日付で下された赤道ギニア対フランスの事件の本案判決は、ある不動産が外交関係条約第1条(i)にいう「使節団の公館」たる地位を取得するに際して接受国が異議申立てを行うことでこれを妨げることができるという、文言上は存在しない要素を解釈上導入したことが論争を呼んでいますが(所長次長も反対票を投じています)、ここではその結論に到達する条約解釈論の一部興味深い点に触れたいと思います。

以上の結論を支えるために、多数意見は、ある不動産につき派遣国が使節団の公館として利用するに際して接受国の事前の承認を求めるいくつかの国家実行を援用します。興味深いのは、多数意見は、それら実行が条約法条約第31条3項(b)にいう「当事国の合意」を示す事後の実行には至らないことは認めつつも、それでも原告の主張する解釈に反する(≒自らの解釈を基礎づける)「要素 (des facteurs)」として考慮している点です。

69. [...] Les deux Parties reconnaissent qu’un certain nombre d’Etats accréditaires, tous parties à la convention de Vienne, imposent expressément aux Etats accréditants d’obtenir leur accord préalable pour acquérir et utiliser des locaux à des fins diplomatiques. [...] La Cour ne considère pas que cette pratique démontre nécessairement «l’accord des parties» au sens d’une règle codifiée à l’alinéa b) du paragraphe 3 de l’article 31 de la convention de Vienne sur le droit des traités en ce qui concerne l’existence d’une obligation d’obtenir un accord préalable, ou les modalités selon lesquelles un Etat accréditaire peut communiquer son objection à la désignation, par l’Etat accréditant, d’un immeuble comme faisant partie des locaux de sa mission diplomatique. Néanmoins, la pratique de plusieurs Etats, qui exige clairement l’accord préalable de l’Etat accréditaire avant qu’un immeuble puisse acquérir le statut de «locaux de la mission», et l’absence de toute objection à cette pratique, sont des facteurs qui vont à l’encontre de la conclusion selon laquelle l’Etat accréditant aurait le droit au titre de la convention de Vienne de désigner unilatéralement les locaux de sa mission diplomatique.

「事後の実行」には至らない散発的な(しかし重要そうに見える)国家実行を現行の条約解釈規則に照らしてどう位置付けて考慮できるかは(研究でも実務でも模擬裁判でも)悩ましい前提問題でしたが、(31条・32条のどのルールにあたるかはともかく)「要素」だというのが裁判所の立場のようです。ちなみに、国連国際法委員会の立場は、事後の実行を確立するには至らない国家実行は第32条の「解釈の補足的手段」の1つとして考慮できるというものでしたので(これのp. 20, paras. 8-9)、裁判所はこれには与しなかった(あるいは事情が異なると考えた)ということかもしれません。

国際司法裁判所、仮保全措置の実施確認パネルの仕組みを導入

 

12月21日付のプレスリリースで発表されました。司法業務に関する決議に11条が新設されています。3名の裁判官(国籍裁判官・ad hoc裁判官を除く)から成る委員会が都度設立され、仮保全措置の実施に関する当事国からの情報を検討し、取りうる選択肢について裁判所に勧告を行うという仕組みです。

一部で議論されておりました、当事国から提出される報告書の一般公開の可否については特段言及はありません。ガンビア対ミャンマーの事件で、ミャンマーが提出した仮保全措置の履行に関する報告書についてロヒンギャ支援団体が一般公開を求める書簡を公表しており、話題となっていましたが、この点に応えた措置ではないようです。訴答書面も口頭弁論開始までは公開されないのでこれと平仄を合わせているとみることもできますが、国際海洋法裁判所では、特段明示の根拠条文なく一般公開される実務となっているので(例えば)、国際司法裁判所でも規程や規則の改正が必須の前提というわけではなさそうです。

第三者的には透明性が高いことが望ましいともいえますが、もし公開するのであれば、今後出てくる報告書は(良くも悪くも)そのことを前提とした書きぶりになってくるだろうということは念頭に置く必要がありそうです。

14 December 2020

国際司法裁判所のJudicial Fellowプログラムについての信託基金設立へ

 


国連総会の要請により、国連事務総長により設立される見通しです。Judicial Fellow(旧University Trainee、いずれにせよ、日本語訳は難しいです)プログラムは、候補者を送り出す側の大学が資金面での負担を負うため、財政的制約により、候補者を派遣できる機関が米国ロースクールを中心とした特定地域の大学に偏ってしまうという課題があり、その是正措置と位置付けられます。

基金の対象は、「途上国にある大学出身の途上国国民(nationals of developing countries from universities based in developing countries)」とのことです(15項)。残念ながら、先進国にはあるけども財政的には制約がある大学出身の場合には対象とならないようです。

05 November 2020

三井物産、再生可能エネルギー投資に関してスペインを相手取り投資仲裁申立

 

10月30日付でICSID事務局ウェブサイトに記載されております(ICSID Case No. ARB/20/47、管轄権の基礎はエネルギー憲章条約)。詳細の記載はありませんが、太陽光発電に関する補助金制度の変更に起因する一連の投資紛争の1つと推測されます。日系企業による対スペイン申立としては、公表されている限りではこれが4件目となります。

19 October 2020

国際司法裁判所、DRC対ウガンダの事件で鑑定人を嘱託

 

9月8日付命令で嘱託を決定し、10月12日付命令で具体的に4名の鑑定人を選任しています。

従来の事例との最大の違いは、一方当事国(ウガンダ)が裁判所の鑑定人嘱託に強く異議を申し立てていたにもかかわらず、裁判所が選任に至った点に見出されます(Judge Sebutinde個別意見がこの点を物語ります)。直近の例であるコスタリカ対ニカラグアの事件では、被告ニカラグアは裁判所の鑑定人嘱託提案に反対していませんでした。

もっとも、鑑定人のterms of referenceを見ると、すでに裁判所に提出されている証拠資料及び公刊資料に基づいて("Based on the evidence available in the case file and documents publicly available")各種賠償算定の基礎を提供するとあるので(16項)、鑑定人自身による独自の現地調査や証拠収集は求められていないと理解できるかもしれません。そうであれば、紛争当事国の協力の見込みが無くとも、鑑定人としては求められる任務を最低限遂行することは可能ではあるかと思います。鑑定人嘱託と紛争当事国の協力の関係性については、拙著(196‐201頁)をご覧ください。

08 October 2020

欧州人権裁判所、ナゴルノ・カラバフ紛争関連申立でトルコにも暫定措置を命令

 


9月末に再燃したナゴルノ・カラバフ紛争に関連して、アルメニアがアゼルバイジャンを相手取り欧州人権裁判所に国家間申立を提起し、裁判所は双方に対して軍事行動を控えるよう求める暫定措置を命じていました(9月29日)。その後、アルメニアは今度はトルコを相手取った国家間申立を提起し(10月4日)、裁判所は10月6日付でやはり暫定措置を命令しました。プレスリリースによれば、次のような内容の措置が命じられたとのことです(強調本文)。

"Taking account of the escalation of the conflict, the Court has decided to apply Rule 39 of the Rules of Court (interim measures) again. It now calls on all States directly or indirectly involved in the conflict, including Turkey, to refrain from actions that contribute to breaches of the Convention rights of civilians, and to respect their obligations under the Convention".

同紛争に関連してトルコによるアゼルバイジャン支援が注目されている中での司法判断となりました。対アゼルバイジャン措置の場合には生命権(第2条)や拷問禁止(第3条)といった具体的義務への言及があったのに対し、上記の対トルコ措置においては条約順守を一般的に求めるにとどまっている点が注目されるかと思います。

03 September 2020

カナダとオランダ、ガンビア対ミャンマーの事件に訴訟参加の意向表明

 


9月2日付で共同声明が発出されています。規程62条参加なのか63条参加なのかは明らかにはされていませんが、"[Canada and the Netherlands] will pay special attention to crimes related to sexual and gender-based violence, including rape"とのことです。


05 August 2020

アルゼンチン、債権者団との債務再編交渉妥結



数か月にわたり債権者団と債務再編交渉を続けてきたアルゼンチン政府ですが、8月4日付でステートメントを公表し、債権者団と合意に至ったと発表しました。(国際)法的観点から興味深いのは、(債務減免幅や経済財政への影響もそうですが)新債券において集団行動条項の強化を予定するとの記述です。

"Argentina will adjust certain aspects of the collective action clauses in its New Bond documentation to address proposals submitted by members of the creditor community that seek to strengthen the effectiveness of the contractual framework as a basis for the resolution of sovereign debt restructurings upon the support for such adjustments of the broader international community".