19 October 2020

国際司法裁判所、DRC対ウガンダの事件で鑑定人を嘱託

 

9月8日付命令で嘱託を決定し、10月12日付命令で具体的に4名の鑑定人を選任しています。

従来の事例との最大の違いは、一方当事国(ウガンダ)が裁判所の鑑定人嘱託に強く異議を申し立てていたにもかかわらず、裁判所が選任に至った点に見出されます(Judge Sebutinde個別意見がこの点を物語ります)。直近の例であるコスタリカ対ニカラグアの事件では、被告ニカラグアは裁判所の鑑定人嘱託提案に反対していませんでした。

もっとも、鑑定人のterms of referenceを見ると、すでに裁判所に提出されている証拠資料及び公刊資料に基づいて("Based on the evidence available in the case file and documents publicly available")各種賠償算定の基礎を提供するとあるので(16項)、鑑定人自身による独自の現地調査や証拠収集は求められていないと理解できるかもしれません。そうであれば、紛争当事国の協力の見込みが無くとも、鑑定人としては求められる任務を最低限遂行することは可能ではあるかと思います。鑑定人嘱託と紛争当事国の協力の関係性については、拙著(196‐201頁)をご覧ください。

08 October 2020

欧州人権裁判所、ナゴルノ・カラバフ紛争関連申立でトルコにも暫定措置を命令

 


9月末に再燃したナゴルノ・カラバフ紛争に関連して、アルメニアがアゼルバイジャンを相手取り欧州人権裁判所に国家間申立を提起し、裁判所は双方に対して軍事行動を控えるよう求める暫定措置を命じていました(9月29日)。その後、アルメニアは今度はトルコを相手取った国家間申立を提起し(10月4日)、裁判所は10月6日付でやはり暫定措置を命令しました。プレスリリースによれば、次のような内容の措置が命じられたとのことです(強調本文)。

"Taking account of the escalation of the conflict, the Court has decided to apply Rule 39 of the Rules of Court (interim measures) again. It now calls on all States directly or indirectly involved in the conflict, including Turkey, to refrain from actions that contribute to breaches of the Convention rights of civilians, and to respect their obligations under the Convention".

同紛争に関連してトルコによるアゼルバイジャン支援が注目されている中での司法判断となりました。対アゼルバイジャン措置の場合には生命権(第2条)や拷問禁止(第3条)といった具体的義務への言及があったのに対し、上記の対トルコ措置においては条約順守を一般的に求めるにとどまっている点が注目されるかと思います。