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19 September 2022

宣伝:ソブリン債紛争処理の国際法

 

という主題の本を書き、ケンブリッジ大学出版局から公刊いたしました。お手すきの際にお読みいただけますととても嬉しいです。

09 June 2021

欧州委員会、ドイツに対して条約違反手続を開始

 


9日付で正式に開始すると、欧州議会の議員が発表しています。条約違反手続はもちろん、EU運営条約258条1項に基づくものであり、加盟国による同条約(およびEU条約)上の義務違反があると考える場合に、欧州委員会が開始することができるものです。

問題の発端は2020年5月のドイツ連邦憲法裁判所判決であり、欧州中央銀行による債券購入計画(public sector asset purchase programme: PSPP)を権限踰越(ultra vires)と判断した事件(PSPP判決)です。判決に先立ち、ドイツ連邦憲法裁判所は、欧州司法裁判所に対して先決裁定を求めており、欧州司法裁判所は、PSPPはEUの権限を逸脱するものではない(通貨政策の範疇に属する)と結論していました(C-493/17 Weiss判決)。にもかかわらず、ドイツ連邦憲法裁判所はこれと逆の結論に到達するわけですが、その際、PSPPの権限踰越のみならず、先決裁定について判決した欧州司法裁判所についても任務逸脱があると判断し、したがってドイツとしては救済措置(EU条約19条1項第2文)を講じる必要はないと判断した点が大きく話題になりました(例えばこの特集)。

ドイツ連邦憲法裁判所のこうした姿勢はある種一貫したものでありますが(例えば、リスボン条約事件判決の240-241項)、EU法の解釈をめぐる欧州司法裁判所と加盟国裁判所の相克を示す新展開となりそうです。ちなみに、筆者が個人的に関心を寄せる別の事件については同様の展開は(まだ)見られないようです。

21 April 2021

ドイツ憲法裁判所、欧州復興基金を批准する国内法令への大統領署名の差止申立を却下

 


4月21日付のプレスリリースにより、15日付の命令で却下されたと述べられています。COVID-19対策として欧州委員会が7500億ユーロ相当の資金を市場から借り入れを行うことについての詳細を定めた欧州理事会決定(2020/2053)を批准する法令のドイツ基本法適合性が争われている事件における判断になります。注意すべきは、本命令はあくまで批准法令に対する大統領署名の差止め(einstweiligen Anordnung)請求をドイツ憲法裁判所が却下したにとどまり、いわゆる欧州復興基金のドイツ基本法適合性にかかる本請求についての判断は今後ということになります。

ドイツ憲法裁判所は昨年、欧州中央銀行(ECB)を通じたソブリン債購入計画に関し、ECBが比例性評価を行ったことの保証をドイツ政府に求める判断を下して話題となりましたが、本件については同様の介入的な結論には至りませんでした。判断推論としては、利益衡量により、署名差止めにより課される外交政策上の制約が重視されています。

05 August 2020

アルゼンチン、債権者団との債務再編交渉妥結



数か月にわたり債権者団と債務再編交渉を続けてきたアルゼンチン政府ですが、8月4日付でステートメントを公表し、債権者団と合意に至ったと発表しました。(国際)法的観点から興味深いのは、(債務減免幅や経済財政への影響もそうですが)新債券において集団行動条項の強化を予定するとの記述です。

"Argentina will adjust certain aspects of the collective action clauses in its New Bond documentation to address proposals submitted by members of the creditor community that seek to strengthen the effectiveness of the contractual framework as a basis for the resolution of sovereign debt restructurings upon the support for such adjustments of the broader international community".

23 May 2020

アルゼンチン、6年ぶり9度目のデフォルト(債務不履行)




アルゼンチン政府は22日を期限として債務再編交渉中でしたが、同日債権者団との合意に至らず、約5億ドルのデフォルト(債務不履行)に陥りました。これでアルゼンチンのデフォルトは6年ぶり9度目となります。

債務不履行額に比して報道の論調が比較的落ち着いているのは、債権者団が交渉継続に応じる姿勢を示しており、即座には訴訟乱発には至らないと見込まれているからのようです。再設定された次の交渉期限は6月2日と報じられております。
(6月2日追記:6月12日まで交渉期限が再延長されたようです)
(6月14日さらに追記:6月19日まで再延長されました)
(6月20日さらに追記:7月24日まで再延長されるようです)

なお、こうした国家債務不履行は時折「テクニカル・デフォルト」と呼ばれることがあります(今回もそうです)。ただ、いかなる意味において「テクニカル」なのか必ずしも統一的な意味は与えられていないように思います。定義的には、「a deficiency in a loan agreement that arises from a failure to uphold certain aspects of the loan terms other than the regularly scheduled payments」とされています(ただ、これだと今回のアルゼンチン・デフォルトは「テクニカル」ではないような気もします)。支払い能力があるにもかかわらず不履行を選んだという趣旨でこの用語を用いるもありますが、この場合にはstrategic defaultという用語が別に用意されています。2014年のデフォルトも「テクニカル・デフォルト」と呼ばれていましたが、これは、私個人としては、アルゼンチン政府としては(協調的な)債権者への弁済の準備があったにも関わらず他の(敵対的な)債権者による「抜け駆け訴訟」の結果として支払いが阻止されてしまった(See NML Capital v. Argentina, 727 F.3d 230 (2nd Cir. 2013))という極めて特殊な状況を「テクニカル」と呼んでいるものと理解していましたが、そうではない用法もあるようです。