24 May 2021

ベラルーシ、民間旅客機を航路転換させ体制に批判的なジャーナリストを拘束

 


すでに広く報じられている通り、ギリシャ発リトアニア行きの民間航空機FR4978便がベラルーシ(ミンスク)に航路変更され、着陸とともに乗客であったジャーナリストが拘束されたとのことです。事の性質上、詳細は報道に拠るほかありませんが、安全保障上の懸念(FR4978便に爆発物が搭載されている可能性)をベラルーシ管制から伝えられたFR4978便は、スクランブル発信したベラルーシ戦闘機によりミンスクまでエスコートされたとのことです。ただ、捜索の結果爆発物は発見されず、その際にベラルーシ体制に批判的なジャーナリストが拘束されたことから、同氏を拘束するために虚偽の懸念をもって着陸させた、との批判がなされています。

本件については、ベラルーシの行為を「国家テロリズム」との表現で批判する声が散見されます(例えば)。ICAOはシカゴ条約違反の可能性を示唆していますが、1971年モントリオール条約(民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約)のほうがわかりやすいかと思います。同条約第1条1項(e)は、「虚偽と知っている情報を通報し、それにより飛行中の航空機の安全を損なう行為」を犯罪としているため、国家が自らの機関(ベラルーシ管制)を通じて条約上の犯罪を犯した、と論じる余地があります。この論理構成が仮に難しい場合でも、第10条1項において、「締約国は、国際法及び国内法に従い、第1条に定める犯罪行為を防止するためあらゆる実行可能な措置をとる(shall)」とあるので、防止義務違反については論じる余地が出てくるように思います。

ちなみに、モントリオール条約には紛争処理条項があり(第14条1項)、仲裁ひいては国際司法裁判所への紛争付託が認められていますが、残念ながらベラルーシは同条に対して留保をしています。

追記:ほぼ同じ観点から分析したTweetがすでにありましたので、こちらもあわせてどうぞ。