協会としての意思決定は少し前のようですが、6月30日付で下された仲裁パネル決定の中で言及されたこともあり、報道されているようです。
本件は、申立人(岐阜県に本拠を置くバドミントンチーム)が、被申立人(日本バドミントン協会)が主催する実業団バドミントンリーグへの登録を申請したところ、協会がこれを認めないと決定したため、当該決定の取消を求めてスポーツ仲裁に申し立てた事案です。2021年4月28日付の仲裁判断は申立人の請求を認容し、協会の決定を取り消しを判断していました(JSAA-AP-2020-005号事案)。が、協会はその後、スポーツ仲裁自動応諾条項からの離脱を議決のうえ(5月29日)、日本スポーツ仲裁機構に対してその旨通知し(6月10日)、機構がその受領を確認した(同11日)後に、「6月15日ころ」に、申立人をリーグに登録させない決定を行ったという事実経過です。そこで申立人は再度仲裁を申し立てましたが(6月17日)、上記自動応諾条項からの離脱の効果により、仲裁合意が存在しないと判断され、手続の終了が決定されました(JSAA-AP-2021-001号事案)。
国際法に慣れ親しんだ者としては、不利な仲裁判断が下された側がのちに仲裁管轄合意を撤回あるいは合意の範囲を縮減するということは日常茶飯事であり、珍しくない現象ですが、こと日本スポーツ仲裁業界では異例の事態のようであり、仲裁パネル決定も、自動応諾条項の在り方について長文にわたる「付言」を付しています。
なお、公平性の観点から付記しますと、日本バドミントン協会は、上記仲裁自動応諾条項からの離脱と同時に「不服審査会」を設置し、チーム登録の承認に関する不服申立の仕組みを協会内部に設けたようです。
さらに、先行する仲裁判断が扱った事案は2020年のリーグ登録申請にかかる紛争であり、本件は2021年のリーグ登録申請にかかる紛争である、と本件仲裁パネルが認定している点も踏まえる必要はあります。