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22 January 2024

ノルドストリーム2が申し立てていた投資仲裁手続が再開



停止していたノルドストリーム2の投資仲裁手続ですが、再開したようです。再開を決定する手続命令12の発出は2023年10月16日付ですが、PCAウェブサイトに掲載されたのは比較的最近と思われます。懸案であった仲裁費用(被申立人側の弁護士費用)のデポジットを申立人側が完了したことによります(パラ25)。

30 October 2023

欧州連合を相手取った投資仲裁の申立(おそらく2件目)

 

10月24付でICSID事務局に登録されました。エネルギー憲章条約に基づく仲裁申立です。欧州連合はエネルギー憲章条約の当事者ではありますが、ICSID条約の当事者ではないため、ICSIDの追加的制度に基づく手続が選択されています(ECT第26条4項(a)(ii))。

欧州連合を相手取った投資仲裁申立としてははおそらく2例目となります。1件目はロシアのウクライナ侵攻後有名になったノルドストリーム2による申立で、こちらはUNCITRAL仲裁規則に基づき常設仲裁裁判所で審理が進められていましたところ、今般の情勢を踏まえて手続が停止していました。その後、欧州連合が仲裁手続の打ち切りを申し立てていましたところ、仲裁廷は最近これを却下しました。制裁によって仲裁手続き自体が妨げられているわけではなく、またノルドストリーム2の操業に対する地政学的影響は実体判断に属する事項との判断によります

04 April 2023

米連邦地裁、エネルギー憲章条約に基づく対スペイン仲裁判断の承認を拒絶

 

Blasket Renewable Investments v. Spainという事件の3月29日付命令になります(事件番号21-cv-03249-RJLでPACERにて検索ください)。原告は、The PV Investors v. Spain (PCA Case No. 2012-14)の申立人企業(オランダ法人)の一部から仲裁判断を購入した法人(デラウェア州法人)です(3月6日付Memorandum参照)。

EU域内の投資条約の効力およびそれら条約(ECTのEU加盟国間関係も含む)に基づき設立される仲裁廷の地位については、EU法の優位性を根拠に投資仲裁廷の管轄を否定する立場(Achema判決以降の一連の欧州司法裁判所判決)と、ECTの自律性を根拠に仲裁管轄を肯定する立場(殆どの投資仲裁判断)とが対立してきましたところ、仲裁判断の承認執行申立を受けた米国の連邦裁判所が前者に親和的な立場を示したのは本件が(おそらく)最初と思われます。理由付けの要点は下記部分(p. 14)になります。

The most straightforward reading of [Art 26(6) ECT] is that any award issued by an arbitral tribunal established under the authority of Article 26 must be consistent with both the ECT itself and any other "rules and principles of international law" that apply to a dispute between the parties. As such, when resolving a dispute between an EU Member State and another EU national, the tribunal must apply "rules and principles" derived from the EU treaties--sources of international law--as those rules are "applicable" to the parties before it. Id. Because the agreement to arbitrate between Spain and the Companies was invalid under EU law, see Komstroy para. 66, there was no valid agreement to arbitrate as defined by the ECT itself. 6 As such, the tribunal lacked authority to decide the dispute, and any award was, by definition, ultra vires.

要するに、EU法の適用をECT自身が要求している、というECT解釈になります。大多数の投資仲裁判断と一線を画するばかりか、仲裁廷がEU加盟国法をlex arbitriとする限りにおいて当該加盟国法に取り込まれたEU法を適用するという論理構成を採用した最近の例(Green Power v Spain, 9REN v Spain Annulment)からみてもさらに踏み込んだ立場になります。事実、本件仲裁判断を下した仲裁廷はスイス法をlex arbitriとしたものなので(パラ516)、lex arbitriを経由する論理構成は採用できなかったことになります。

米国における対スペイン仲裁判断の承認執行事例だけで比較してみても、先月同じ連邦裁判所(コロンビア特別区)で下された2つの判断(9REN v. Spain, NextEra Energy v. Spain)とも相容れないように見受けられます。

05 April 2022

ノルドストリーム2が申し立てていた投資仲裁手続が停止

 


ロシアによるウクライナ侵攻前後から話題の海底ガスパイプライン・ノルドストリーム2ですが、その運営会社(Nord Stream 2 AG)が欧州連合を相手取り申し立てていた投資仲裁手続の停止が、3月16日付の手続命令にて発表されました。申立人の銀行資産等へのアクセスが凍結され、必要な決済を行うことができないというのが要請の理由です。Nord Stream 2 AGはスイス法人ですが、ロシアの国営会社ガスプロムの100%子会社であり、ウクライナ侵攻開始後の対ロシア制裁の影響と推認されます(申立人要請にも「最近の地政学的展開」への言及があります)。欧州連合側が条件付きながら手続停止に反対した点が興味深いですが、仲裁廷の長は申立人の要請を容れました。ひとまず、6月20日に手続的な会合が予定されたようです。

なお、本件はエネルギー憲章条約に基づき申立人が2019年に仲裁申立したもので、域内ガス市場に関する欧州連合による規制枠組みの変更を主題とする紛争です。本年2月22日付のドイツによる計画停止の発表に関するものではありませんので、念のため。

15 February 2022

欧州委、英国に対して条約違反手続を開始

 

9日付のプレスリリースで発表されました。長らく争われているMicula v. Romania仲裁判断の執行をめぐる新展開となります。仲裁判断の執行停止を解除した2020年の英国最高裁判所判決TEFU第351条に違反すると主張する内容となっています。周知のとおり、英国はすでにEUから離脱していますが、離脱協定第87条に基づき、経過期間終了から4年後(2024年)までは欧州委員会は英国に対する新たな違反申立てを欧州司法裁判所に付託することができます。

仲裁判断に基づくルーマニアによる申立人に対する損害賠償の支払いが国家補助(TFEU第108条)を構成するとの欧州委員会の決定を一般裁判所が取り消す判決を下していたところ、司法裁判所は1月25日、破棄差し戻しを命ずる判決を下したことが背景経緯となります。

29 October 2021

EU司法裁判所、ポーランドに対し1日当たり100万ユーロの制裁金支払いを命じる暫定措置を発出


EU司法裁判所(副所長)は10月27日、ポーランド政府に対して1日当たり100万ユーロの制裁金支払いを命じる暫定措置命令を発出しました。 広く報道されている通り、ポーランド最高裁判所に設置された裁判官懲戒制度(腐敗防止目的と説明)が司法権の独立を害する(EU条約第19条1項に違反する)との欧州委員会の申立てを受けて、EU司法裁判所(副所長)は7月、懲戒制度を基礎づけるポーランド法令の停止を命じていたところ、その履行措置が不十分であるとの判断が理由として挙げられています。

EU法上、EUの予算のコンディショナリティーとして法の支配(司法の独立)の遵守が要求されており(規則2020/2092の第3条)、いわゆるコロナ復興基金(Next Generation EU)と法の支配の遵守とを紐つけて補助金の分配の停止を求める主張もあります。こちらの動きも別途注視する必要があります。

なお、たまたまですが、本命令の前日である26日付で、Achmea判決の射程をアドホック仲裁合意に拡張する(投資仲裁制度を定めるIntra-EU BITsがEU法に反するのと同様、EU加盟国と他のEU加盟国の投資家の間でのアドホックな仲裁合意もEU法に反するとする)判決(Poland v. PL Holdings)が下され、こちらも話題となっていますが、その中で、本件投資家(ルクセンブルク法人)は条約上の投資仲裁制度ではなくポーランド司法制度によって保護されるとした次のくだりが、以上の文脈と併せると興味深いところがあります(強調筆者)。

68 Secondly, the individual rights which PL Holdings derives from EU law must be protected within the framework of the judicial system of the Member States, namely, in the present case, the Polish judicial system. Consequently, even if it were established that there is a lacuna in the protection of those rights, as is alleged by PL Holdings, that lacuna would have to be filled within that system, if necessary with the cooperation of the Court in the context of its powers; however, such a lacuna cannot justify allowing a failure to comply with the provisions and fundamental principles referred to in paragraph 65 above.

10月30日追記:注視する間もなく新展開があり、上記コンディショナリティー規則の不遵守を理由として、欧州議会が欧州委員会を相手取り、EU司法裁判所に提訴したとの発表がありました。

09 June 2021

欧州委員会、ドイツに対して条約違反手続を開始

 


9日付で正式に開始すると、欧州議会の議員が発表しています。条約違反手続はもちろん、EU運営条約258条1項に基づくものであり、加盟国による同条約(およびEU条約)上の義務違反があると考える場合に、欧州委員会が開始することができるものです。

問題の発端は2020年5月のドイツ連邦憲法裁判所判決であり、欧州中央銀行による債券購入計画(public sector asset purchase programme: PSPP)を権限踰越(ultra vires)と判断した事件(PSPP判決)です。判決に先立ち、ドイツ連邦憲法裁判所は、欧州司法裁判所に対して先決裁定を求めており、欧州司法裁判所は、PSPPはEUの権限を逸脱するものではない(通貨政策の範疇に属する)と結論していました(C-493/17 Weiss判決)。にもかかわらず、ドイツ連邦憲法裁判所はこれと逆の結論に到達するわけですが、その際、PSPPの権限踰越のみならず、先決裁定について判決した欧州司法裁判所についても任務逸脱があると判断し、したがってドイツとしては救済措置(EU条約19条1項第2文)を講じる必要はないと判断した点が大きく話題になりました(例えばこの特集)。

ドイツ連邦憲法裁判所のこうした姿勢はある種一貫したものでありますが(例えば、リスボン条約事件判決の240-241項)、EU法の解釈をめぐる欧州司法裁判所と加盟国裁判所の相克を示す新展開となりそうです。ちなみに、筆者が個人的に関心を寄せる別の事件については同様の展開は(まだ)見られないようです。

21 April 2021

ドイツ憲法裁判所、欧州復興基金を批准する国内法令への大統領署名の差止申立を却下

 


4月21日付のプレスリリースにより、15日付の命令で却下されたと述べられています。COVID-19対策として欧州委員会が7500億ユーロ相当の資金を市場から借り入れを行うことについての詳細を定めた欧州理事会決定(2020/2053)を批准する法令のドイツ基本法適合性が争われている事件における判断になります。注意すべきは、本命令はあくまで批准法令に対する大統領署名の差止め(einstweiligen Anordnung)請求をドイツ憲法裁判所が却下したにとどまり、いわゆる欧州復興基金のドイツ基本法適合性にかかる本請求についての判断は今後ということになります。

ドイツ憲法裁判所は昨年、欧州中央銀行(ECB)を通じたソブリン債購入計画に関し、ECBが比例性評価を行ったことの保証をドイツ政府に求める判断を下して話題となりましたが、本件については同様の介入的な結論には至りませんでした。判断推論としては、利益衡量により、署名差止めにより課される外交政策上の制約が重視されています。