09 June 2021

欧州委員会、ドイツに対して条約違反手続を開始

 


9日付で正式に開始すると、欧州議会の議員が発表しています。条約違反手続はもちろん、EU運営条約258条1項に基づくものであり、加盟国による同条約(およびEU条約)上の義務違反があると考える場合に、欧州委員会が開始することができるものです。

問題の発端は2020年5月のドイツ連邦憲法裁判所判決であり、欧州中央銀行による債券購入計画(public sector asset purchase programme: PSPP)を権限踰越(ultra vires)と判断した事件(PSPP判決)です。判決に先立ち、ドイツ連邦憲法裁判所は、欧州司法裁判所に対して先決裁定を求めており、欧州司法裁判所は、PSPPはEUの権限を逸脱するものではない(通貨政策の範疇に属する)と結論していました(C-493/17 Weiss判決)。にもかかわらず、ドイツ連邦憲法裁判所はこれと逆の結論に到達するわけですが、その際、PSPPの権限踰越のみならず、先決裁定について判決した欧州司法裁判所についても任務逸脱があると判断し、したがってドイツとしては救済措置(EU条約19条1項第2文)を講じる必要はないと判断した点が大きく話題になりました(例えばこの特集)。

ドイツ連邦憲法裁判所のこうした姿勢はある種一貫したものでありますが(例えば、リスボン条約事件判決の240-241項)、EU法の解釈をめぐる欧州司法裁判所と加盟国裁判所の相克を示す新展開となりそうです。ちなみに、筆者が個人的に関心を寄せる別の事件については同様の展開は(まだ)見られないようです。