4月30日付の決定が公開されました。通報の受理可能性を肯定する結論に至っております(65項)。その主たる論拠である、通報が個別の人権侵害事例ではなく「a “generalized policy and practice”」に関して申し立てている場合には国内救済を完了する必要はないとの判断は(63項)、すでにカタール対アラブ首長国連邦の通報事例でなされた受理可能性判断を踏襲するものであり(40項)、本判断は大方の予想通りだったかと思います。
本件で目新しいのは、人種差別撤廃委員会は、そうした「a "generalized policy and practice"」の存在は単に通報国が主張すれば足りるわけではなく、証拠による疎明(prima facie evidence)を要すると述べた点にあります(63項)。この点は一見すると当然に思われるかもしれませんが、先のカタール対アラブ首長国連邦の事件では本案に併合していました(41項)。また、人種差別撤廃条約に関する国家間紛争(ウクライナ対ロシア)を扱う国際司法裁判所は、むしろ一切証拠を参照せずに原告の申立の定式のみを根拠に国内救済完了原則の不適用を結論している(ように読める)ため(130項)、異なるアプローチがありうることが示唆されています。
なお、本受理可能性判断に先立つ管轄権判断の審理手続をある意味紛糾させた(?)国連法務局のメモランダムも公開されているようですので、こちらもあわせてどうぞ。