16 March 2022

豪蘭、マレーシア航空17便(MH17)撃墜事件につきICAO理事会に共同付託

 


14日付で発表されました(オランダ政府の発表はこちらも)。(ブログ著者が聞き逃していなければ)「法的手続(legal proceedings)」を開始するとのみ述べられていますが、シカゴ条約上、締約国が付託する事項(matter)をICAO理事会が検討する手続(第54条n号)と、条約の解釈適用をめぐる締約国間の意見の相違(disagreement)について理事会が決定する手続(第84条)とがあります。ロシアの条約違反および責任を追及するという趣旨の言及、およびロシアが交渉から離脱した事実を強調していることから、後者の手続を念頭に置いたものと推察されます。ICAO理事会への紛争付託の前提条件として、当該紛争が「交渉により解決されない」ものであったことが求められており(同条)、本要件が充足していることを指摘する趣旨と位置づけられるかと思います。

締約国の代表からなるICAO理事会は、個人が独立の資格で行動するような司法機関ではないことから、どのような判断が下されるか予測が難しいところがあります。もっとも、ICAO理事会の決定に不服の場合には、アドホック仲裁廷あるいは国際司法裁判所への「上訴」も可能な仕組みとなっています(84条)。

MH17撃墜事件については、ウクライナがロシアを相手取り国際司法裁判所に提訴した係属中の事件の一部にも含まれていますが、本件とは紛争当事国が異なるに加えて請求原因となる国際条約も異なるため、仮に国際司法裁判所に「上訴」されるとしても、重複訴訟が問題となる余地は少ないかと思います。オランダは、欧州人権裁判所にもロシアを相手取った国家間申立を付託していますが、オーストラリアについては本件が最初の国際的な手続と思われます。犠牲者298名中、38名が豪州国籍と報告されています。