19 May 2023

ヨーロッパ評議会、ロシアのウクライナ侵略により生じた損害を登録する機関を設立

 


5月12日付閣僚委員会決議(CM/RES(2023)3)で設立が決定されました。ウクライナにおける・対するロシアの国際違法行為により生じた自然人・法人・国家としてのウクライナの損害に関する証拠資料の登録を任務とする機関です(1.1条)。請求委員会方式の可能性を含め、将来的な賠償メカニズム設立の第1段階としての位置づけが与えられています(2.1-5条)。機関はオランダ・ハーグに設置され(オランダ法上の法人)、ウクライナにサテライトオフィスを構えます(3.1条、3.4条)。機関の理事会(Board)は個人資格からなる7名の個人で構成され、最低4半期ごとに会合を行い、3年任期で業務を遂行します(6条)。業務を遂行する委員には国際法・戦争賠償のみならず、会計や損失評価といった様々な専門性(そしてバックグラウンド)が求められています(6.1条)。どのような人材が任命されるか注目されます。

機関への参加の方式は、拠出金分担があり総会での投票権を持つ参加国(Participant)と、拠出金の負担は任意であり投票権は持たない準加盟国(Associate Member)の二通りがあります。ヨーロッパ評議会加盟国に加えてオブザーバー国の参加も可能であり、日本(オブザーバー国)は「準加盟国」としての参加を表明したようです。

「損害登録機関(Register of Damage: RoD)」と国際法ではあまり聞きなれない言葉ですが、先例としては、占領パレスチナ地域における壁建設から生じた損害を登録する機関が国連総会の下部機関として2007年に設立されており(A/RES/ES-10/17)、今日まで活動しています(現在の構成員はVladimir Goryayev (Russian Federation), Mariana Salazar Albornoz (Mexico), Jeremy K. Sharpe (United States))。