28 July 2020

COVID-19と国際法(7) 国連安全保障理事会が最初のCOVID-19関連決議を採択


本年初頭からのCOVID-19の世界的蔓延をめぐっては、WHOのみならず、国連総会国連事務総長国連人権高等弁務官事務所など、数多くの国連機関が様々な対応を試みてきました。そのような中、国連安全保障理事会も7月1日にようやく最初のCOVID-19関連決議を採択しました(決議第2532号)。常任理事国である米中の政治的対立を背景として安保理にどのような行動が可能かが注目されてきましたが、現在進行中の武力紛争の停戦を呼びかける内容でまとまりました。発生源と目される中国に関しては一切の言及はありません。本決議が求める即時停戦から対ISIL・アルカイダ軍事作戦が除外されているのが興味深いです(3項)。

重要な安保理決議が採択されるたびにその法的拘束力の有無をどう考えるかが気になってくるわけですが、本決議は、第1項において"Demands"の強い動詞を用いて即時一般的な停戦を求めている点は法的拘束力を肯定する方向に読めそうですが、前文において、"the unprecedented extent of the COVID-19 pandemic is likely to endanger the maintenance of international peace and security"という、憲章第7章ではなく憲章第6章(第33・34・37条)に由来する文言を用いている点は、法的拘束力を否定する論拠となりそうです。もっとも、仮に法的拘束力が認められたとしても、国連加盟国ではない非国家武装勢力にも決議の効果が及ぶのかという問題は残りそうではあります。