24 July 2020

カタール航空、湾岸周辺4か国を相手取り国際投資仲裁申立て



2017年6月5日、湾岸4か国(バーレーン、エジプト、アラブ首長国連邦、サウジアラビア)がカタールと外交関係を断絶して以降、同4か国はカタール登録の旅客機の自国における発着及び上空飛行を制限してきました。本年7月22日、これが違法な空域封鎖であり、投資財産の価値を毀損するとして、カタール航空がこれら4か国を相手取り国際投資仲裁申立てを行うとプレスリリースにて発表しました。"the OIC Investment Agreement; the Arab Investment Agreement; and the bilateral investment treaty between the State of Qatar and Egypt"に基づく申立てと説明されています。

これら4か国はこれまで、本空域制限措置について、先行するカタールの国際違法行為(テロリズム防止義務違反等)に対する合法な国際法上の対抗措置であると説明してきましたため、本件仲裁手続が本案まで進む場合には、投資条約違反の主張に対して対抗措置による違法性阻却の抗弁を提起することが予想されます。そしてこれがなされると、外国投資家の投資財産を制限する措置を、当該投資家の本国が行ったとされる先行違法行為に対する一般国際法上の対抗措置として正当化できるか否かという、ちょっと懐かしい投資法上の論点が再燃する可能性があります。一連のNAFTA仲裁事例(ADM v. Mexico, Corn Products v. Mexico, Cargill v. Mexico)を再読しておくといいかもしれません。

本空域制限措置をめぐっては、国際民間航空条約等に違反するとして、カタールがやはり周辺4か国を相手取りICAO理事会に紛争を持ち込んでおり、同理事会はこれまでに自らの管轄権を肯定する決定を行っております。国際司法裁判所が最近下した2つの判決(これこれ)は、このICAO理事会の管轄権についての決定を追認したのみです。